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zoom RSS 未完の「国鉄改革」

<<   作成日時 : 2017/04/25 13:00   >>

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出張先ですが、『未完の「国鉄改革」』をようやく読み終わりました。2001年に発行された、今となってはやや古い本です。著者は葛西敬之氏です。出版当時、JR東海の社長で、のちに会長を務め、今は名誉会長という立場になっていますね。JR東日本のトップを務めた松田氏、JR西日本のトップを務めた井出氏と並び、国鉄改革三羽烏、と呼ばれます。

この本では、葛西氏が国鉄に入社したころから書き起こし、自分がどのような経歴で務めてきたのかを説明しながら、国鉄の内情がどのように腐っていたのかを記しています。そして、鉄道事業というものが持つ本来の特性、労使関係のありかたなどを説明しながら、どうして国鉄改革が必要であったのか、どのようにして成し遂げられたのかが解説されています。

国鉄の内情については、他にもいろいろな本が出ていて勉強してはいるのですけど、なかなか強烈です。労組が強くなりすぎて組合員が暴走し、上司を上司と思わない態度でろくに仕事をしない様子が描かれています。そのように増長してしまうことになった理由も解説されています。一方で、そうした労組でも穏健派が過激派に乗っ取られてしまう経緯も書かれています。このあたりの内情については、非常に解説がわかりやすくなるほどと思います。また、極めて当たり前に思われることでも発言してしまうと、それを言質にものすごい理屈で自分の要求を通そうとしてくる、ほとんど芸当のような技量をもった人たちがたくさんいるということに驚かされます。極めて政治的な世界で、こういう世界を乗り切っていくのは私には到底無理ですね。

国鉄改革で、国労が改革に敵対することになってしまい組織がぼろぼろになっていく様子は、当時の国労幹部だった人が書いて、私も以前読んだ『敗者の国鉄改革』で詳しく説明されていました。一方で、当局に敵対的だったはずの動労が改革に協力するようになる経緯というのはよくわかっていなかったのですけど、この本ではそのあたりの事情も説明されています。改革に向けた動きが進み始める中で、動労というものが持つ性質(基本的に運転士が所属している)ゆえに、国労とは利害が対立してしまうことになったのですね。

こうした混沌と魑魅魍魎の世界から、どうやって国鉄改革が実施されるまで前進していくことになったのか、の説明もわかりやすいです。再建監理委員会の動きに国鉄内部から協力した人たち(葛西氏含む)がいて、基本的な枠組みを提供している、というのがなるほどと思いました。一方、いわゆる「国体護持派」で、国鉄の分割民営化に反対してあくまで国鉄の枠組みで改革をやろうとした当時の首脳陣が作った改革案も、分割民営をやらないだけで、基本的な方針はよく似たものだった、というのが面白いところで、結局のところ、あの状況ではあれ以外にとりうる策はそれほどなかったのだ、と思われます。

ではなぜ、「未完の」改革なのかといえば、JR東海の幹部となった葛西氏にとってみれば、新幹線鉄道保有機構を通じた本州3社の収益調整で、極めて大きな負担をJR東海が強いられることになったことに大変な不満があるようで、そのあたりを訴えているようです。また、JR貨物がアボイダブルコスト方式で線路を使用していることにも不満があり、東海道本線に関する負担の大きさも指摘されていました。結局のところ、改革案を決定し国会を通していく過程で、どうしても政治的な配慮が必要になり、やむをえず改革の枠組みに入れることになった仕組みに、葛西氏としては大きな不満があるがゆえに、こうした部分をさらに継続的に良くしていくことが、改革の完成に必要なのだ、という主張なのだと思います。枠組みは固定のものではなく、事情に応じて継続的に改善していくべきだ、という考えにはまったく同意なのですが、ではこの主張そのものに同意できるかというと、なかなか判断が難しいところです。やはり、JR東海と葛西氏にとっての我田引水的なところがあるのは、ぬぐえないように思います。

葛西氏にとって都合の良いように書かれ、美化して描かれているように思われるところもないわけではないのですけど、しかし、国鉄改革の経緯を知る上では重要な本だと思います。

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