虚実の境界壁

前回は『城東電気軌道百年史』という見事な著作を見せてくださった方が、続いてやはり同人誌として『虚実の境界壁』を出されたので、早速入手してこのほど読み終えました。これまたさすがの調査内容ですね。

この本は新橋駅のいわゆる「幻のホーム」のできる経緯を扱ったものです。俗には、渋谷から線路を伸ばしてきた東京高速鉄道の乗り入れを拒みたい、浅草-新橋間を建設した東京地下鉄道側が、境界壁の撤去になかなか応じなかったために一時的に設けられた仮ホームである、とされてきました。しかしこの本では、実態はそのようなものではなかったことを、地下鉄博物館などに保存されている過去の文献資料を基に解き明かしています。丁寧にその経緯を説明しており、これぞ新橋駅ホーム形成史の決定版ということができるでしょう。これは、本来ならそれなりの鉄道雑誌などで収録されてしかるべき内容ではないでしょうか。

ただ前回もそうでしたが、ややミスがありますね。たとえば13ページ、内務省第56号告示の5号線は、「省線渋谷駅附近ヨリ」で始まっていますが、明らかに「省線池袋駅附近ヨリ」の誤りです。まあ、内容的に大きな齟齬をきたすようなものではないのですが。

こうしてこの問題を事実上決定づける研究成果が発表されたわけですけど、なかなかこの事実関係は浸透しないのですよね。いつまで経っても、「話として面白い俗説」が流通し続けるものなのです。まあこういうことは仕方ないですね。

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