狭軌の王者

齋藤晃氏の新著作『狭軌の王者』を読み終わりました。過去に蒸気機関車関連の本を多数執筆されている、いわゆる「エンスー」の方です。

氏は過去の著作から見ても、日本国鉄の蒸機に愛着はあっても、その技術的問題についていろいろ指摘しており、いわゆる「国鉄史観」に疑問を投げかける人です。過去の著作では、欧米標準軌の様々な機関車の技術を紹介して、それと対比していたところがあったのですが、やはり蒸気機関車にとっては軌間が決定的な性能差異を生み出すところがあり、同じ軌間で比較しなければフェアではない、というところがあったのかもしれません。そこで今回は、ほぼ狭軌の話に絞った本を書いた、ということのようです。

メーターゲージなどのそれ以外の軌間の話も多少出てくるとは言え、3フィート6インチのいわゆるケープゲージが中心となっています。中心として取り扱われるのは、日本、南アフリカ、ニュージーランド、インドネシアと、日本ではあまり紹介されないような鉄道が結構詳しく書かれています。まあ、南アフリカの機関車は軸重20トンという恵まれた線路に支えられて、圧倒的な性能をたたき出している感じもしますが、ニュージーランドの機関車の場合、日本より狭い車両限界に制約されつつもずっと優れた性能を出しているように見えますし、インドネシアなどは狭軌で4気筒を満足に運用して見せていますから、3気筒で問題を抱えて投げ出した日本国鉄は何だったのかということになりますね。著者は、どの機関車が「狭軌の王者」なのかは明確には回答していませんが、日本の機関車でないことは明確、としています。

しかし、蒸気機関車というのはいろいろ面白いメカニズムが考えられて、楽しいものですね。日本でもガーラット式機関車の導入があれば面白かったと思うのですが、著者も書いている通り、日本ではD51の重連を常用しなければならないような貨物列車はなかったから、導入する環境がない、というのも事実なんですよね。そしてその様々なメカが複雑に絡み合うので、どれか1つの要素を改良したからと言って素直に性能が上がるとは限らない、というのが難しいところで、この複雑な関係をうまく解きほぐして改善していくというのは、大変なエンジニアリングセンスが必要だとわかります。

著者の方はあちこちファントリップなどで出かけているようで、各国の蒸気機関車の走行シーンの写真はほとんど自前のようです。これだけあちこちでかけられるのは羨ましいというほかありません。写真も形式図も美しく、良い本に仕上がっていると思いました。

この記事へのコメント

たづ
2019年01月28日 19:07
私の故郷も蒸気機関車時代難所だった場所の近くで、全列車・・・ではないもののかなりな割合の貨物列車は区間的に重連または後補機がついていたとの話を父から聞いています。
ガーラットとかまで行かなくとも、ウィキペディアにもあるKE50形や交友社「SL」に載っていたKD55などが、重量列車区間や山岳線に製造されていたらば、同じ流儀で製造していたにしても鉄道の姿はだいぶ違ってたろうな、と思うことは多々あります。
相対的に平地の多い関東地区や北ドイツの環境では思いつかなかったのかもしれませんが。
そういった図面すらないですが、E10の動輪を前後2組付けた1E1+1E1ガーラット(10動軸でタンク機とみなし仮に「J10」と呼んでいます)または1EE2アーキュレーテッドや、C12の後釜としてC11のボイラに夕張11形~9600形相当の径の4軸動輪を付けた急勾配簡易線用タンク機とかをイメージすることもあります。
Tamon
2019年01月29日 00:43
齋藤氏の考えだと、重連で全区間を走るような貨物列車がないと、ガーラットを導入しようということにはならないんじゃないか、ということみたいですね。一部区間の補機だけなら重連で済ますだろうと。補機が常に2両連結必要な場所だとまたどうかという感もありますが。

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