暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史

暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』を読み終わりました。この4月に出たばかりの本です。

著者の牧久氏は、2017年に『昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実』を出しており、そちらも読んでいます。前作は国鉄分割民営化の顛末をかなり詳細に取材して描いたもので、大変面白かったので今回の作品にも予告の時点でかなり期待していました。そして期待に違わぬ内容でした。

国鉄の労働組合は大変複雑で、さらに国鉄分割民営化の過程で分裂したり合流したりしましたから、さらに訳が分からなくなっています。しかし、この本では国鉄末期からの経緯を一通りたどることができます。背景にどんな事情があったのか、国鉄で2番目の構成員数のあった動力車労働組合(動労)を中心に描いています。なぜ国鉄千葉動労が動労本体から分裂して、本体が革マル派系であるのに対して千葉動労が中核派系なのか、よくわかっていなかったのですが、この本を読むとわかります。JRになった後に、鉄労系といったん合流しながら再分裂した経緯も解説されています。

取り上げた対象である動労のドン、松崎明氏については、実によく調べ上げて書き込んでいます。このような本が出ることには、松崎氏が健在であった頃なら、物凄い圧力がかかったのでしょうね。週刊文春でJRの妖怪と取り上げられたときには、キヨスクでの取り扱いを拒否することで屈服に追い込みましたし、そのあたりの経緯もよくわかります。

しかしある頃までは、打つ策が実にうまくはまって動労の労働運動を指導して拡大してきたように思われますが、1990年代後半くらいからは、何だかおかしくなってきた感じがしますね。少しでも自分に批判的な態度を見せると敵であると決めつけて、徹底して排除してしまう動きが顕著になり、それまで長く松崎氏を支えてきたような忠実な家臣がどんどんいなくなってしまう感じが出ていました。もちろん、元から暴力を容認するような新左翼の一派だったので、そのままなのだと言われればそうなのかもしれませんが、いよいよそれが顕著になっているように感じました。そういうことをしていると、どんどん人が減ってしまうのですよね。

著者は、前作では触れ切れなかった労組問題について取り上げなければと考えていたのだそうで、まさに前作を補完する、民営化以降の労組問題をふくめたまとめの作になっています。実によく取材していますし、膨大な出典を付しているので学問的な検証にも耐えそうです。これは労作というほかありません。JR東労組の崩壊に近い組合員大脱退が昨年になって発生したために、慌ててそのあたりを追記したようなのですが、結果的に綺麗にまとまった感じがします。この本は、この手の問題に興味がある人であれば、間違いなくお勧めできます。

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