鉄道政策の改革

鉄道政策の改革 ー鉄道大国・日本の「先進」と「後進」ー』を読みました。交通経済学者の斎藤峻彦氏の遺稿となった本だそうです。

圧倒的な輸送量に支えられて、内部補助に基づく運営が依然として継続されている日本の鉄道と、主にヨーロッパを中心とする、上下分離・オープンアクセス・公共サービス義務の形態で運行されるようになった鉄道の政策面を比較した本です。やはり日本の鉄道が輸送量や採算性の面で圧倒的に恵まれていることがよくわかります。しかしそれがために、19世紀のままのような規制体系と政策が維持されたままなんですよね。このあたりの問題意識はよくわかります。

もっとも、日本がヨーロッパみたいな形態を取り入れるにせよ、どこをどう反映していいかはよくわからないですね。この本ではあまり具体的な提言までは踏み込まれていません。

問題点もあり、年号を間違えているところがある他、札沼線を日本の上下分離の例として挙げていますが、札沼線は上下分離はされていません。また重大な問題として、かつて週刊東洋経済でかなりの仮定を重ねて計算された、JR各路線の営業係数の推定値を、議論の根拠に使っている部分があります。しかしこの推定はおかしいとあちこちから指摘されていることであり、実際に営業係数が公開されたJR北海道の各路線と比較してもまるで合っていないことが確認されているものです。こういうものを使うべきではないことは、学者であればわかることではないでしょうか。

とはいえ、双方の鉄道政策の現状をよく解説して比較してあり、良い本になっているものと思います。

この記事へのコメント

Tamon
2019年11月27日 01:15
上記のうち、札沼線については北海道高速鉄道開発が複線化と電化の事業を実施してJR北海道に貸し出しているため、上下分離が一部適用されているとの指摘を受けました。訂正します。