日本の鉄道路線:国鉄在来線の栄枯盛衰

日本の鉄道路線:国鉄在来線の栄枯盛衰』を読み終わりました。ミネルヴァ書房からシリーズ日本再発見と称して刊行されている本の1冊で、過去に私は『鉄道とトンネル』を読んだことがあります。同じ著者ですね。

日本の在来線鉄道網の建設の経緯を一通り解説しており、明治の鉄道敷設法、鉄道国有法、軽便鉄道法、改正鉄道敷設法、戦時私鉄国有化、戦後の鉄道建設公団など、おおむね制度や組織の面から解説していっています。そのほか個別具体的な路線の経緯に詳細に触れた節が4つあり、琵琶湖周辺、伊那谷、鹿児島への鉄道、稚内への鉄道が解説されています。

しかしこの著者は、どうも思い込みとかで書いてしまう傾向があるようですね。18ページ、日本鉄道の建設ルートは、戊辰戦争で旧幕府軍側についた奥州と羽州地方を回避したルートとした、などと書いていますが、奥州と羽州を回避したらどこにも敷設できません。奥州は福島、宮城、岩手、青森ですし、羽州は山形、秋田です。東北地方のすべてが回避対象の東北本線なんてあるものでしょうか。なお、奥羽越列藩同盟の盟主的存在の仙台藩本拠地の仙台を東北本線は通っています。

31ページ、鹿児島-八代間は、鹿屋航空基地があったことが敷設を急いだ理由かもしれない、と書いていますが、この区間の開通は日露戦争の直後の1909年であり、日本で初めて飛行機が所沢で飛んだのは1911年です。鹿屋航空基地に至っては1936年の開設です。いくらなんでも前後関係を無視しすぎです。

32ページから33ページ、鉄道国有法に反対して民営鉄道を維持しようとする勢力を「民主主義を唱える勢力」と書いていますが、民営鉄道の維持は民主主義との関係は何もないですね。あくまで資本の論理で民営鉄道主義を唱えたのであって、民主主義のためではありません。

全体にこういうところがあり、個別の記述はよく検討しなければ信じることができないという感じがします。話としては面白いのですけどね。

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