トラジャ

トラジャ』を読み終わりました。同じ西岡研介氏が書いた『マングローブ』に続いて、JRの労働組合の話、特にJR東日本を牛耳るJR東労組の話が中心となった本です。

よく知られている通り、JR総連系の組合は革マル派の影響が強く、敵対者への激しい攻撃があるので、西岡氏はよくここまで調べ上げて本を書いたものだと思います。内部の協力者をうまく見出して情報提供を受けるところなど、さすがの取材力だと思わされます。この内部協力者もばれると危険なわけですが。

前作ではJR東労組の話がほとんどでしたが、今作ではJR北海道の労組の話もかなり詳しく取り上げられています。それに比べるとずっと簡単にJR貨物の労組の話も出てきます。この3つの会社は、JR総連系の組合が主流派であり、他の4つのJRはより穏健なJR連合系の組合が主流派です。それでも、JR九州におけるJR総連系の組合のゴタゴタの話も少し取り上げられています。

やはり、松崎氏という存在が非常に大きかったのだなと思わされます。思想的にも運動論的にもほとんど松崎氏の指導によるものだったようですし、その人が腐敗し始めてしまうと急に迷走した感じになってしまいます。そして亡くなると、組織がかなりガタガタになってきた感じがします。昨今のJR東日本における大量脱退騒動も、松崎氏が健在なら起きなかったことでしょうし。思想的にはともかく、人間的には相当な魅力がある人だったのでしょうね。しかしこの非民主的で独善的、陰謀論的、敵対者への激しい攻撃などは、現代の気質にはそぐわないでしょう。

JR北海道の内情には驚かされました。なぜ2人の社長が自死を選んだのか、これまでは謎だったのですが、この本を読むと納得させられるところがあります。労政のゴタゴタがあったのですね。そして、技術開発をしきっていた副社長→会長は、振り子ディーゼル特急の導入では大きな功績があったと思うのですが、労組と癒着して非常に政治的に動く人で、まったくの驚きでした。アルミ車の導入の時のゴタゴタも、こんなに政治的な話であったとは。もはや、会社の金で好き放題に趣味の車両開発をしている人にしか見えなくなってしまいました。

組合の性格上、情報提供者も登場人物も明確にできないことが多く、イニシャルが多用されていることや、時代とともに人物間の関係が変化し味方であったはずの人が敵対関係になってしまうところがあるなど、非常に複雑で数の多い登場人物の関係のために、把握するのが困難なところもあります。特にJR総連内部での対立が始まるともはや追っていくのが困難な水準でした。しかし、それでも非常によく取材して書かれた、評価の高い本です。この分野を知ろうとするなら必ず読まなければならない本でしょう。

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