佐久鉄道と小海線

佐久鉄道と小海線』を読了しました。以前紹介した碓氷アプト鉄道と同じ筆者です。

佐久鉄道の建設に始まり、国鉄としての小海線に至るまで、この路線の歴史を丹念に追いかけている本です。これまた見てきたような書き方がされていますが、ある程度は想像を交えているのでしょう。ただ、碓氷アプト鉄道に比べると、出典となる新聞記事の写しなどが丁寧に示されていて、こちらはかなり信頼性が高い本に見えます。

もっとも、鉄道路線がこの経路になった理由を、かなりのところ鉄道忌避説に求めており、その部分については出典がないので、そこは俗説を書いてしまったのだろうと思います。たとえば、小海線が乙女駅付近で信越本線/しなの鉄道線から離れて南へ向かうところは、当初はほぼ真南にある森山という集落を経由して岩村田の方へ向かうはずだったとしていますが、反対運動があって三岡付近の経由に変わったとしています。しかし、地理院地図で断面図を描いてみると、森山付近は標高が20メートルほど低くて経由すると下ってから登ることになるのに対し、一方で三岡を経由するとほぼ一定の標高を保って岩村田へ向かうことができるので、工学的な理由で選ばれたルートではないかと思えます。

そういった欠点はありますが、丁寧に出典を示して書いているところはかなりの価値があります。よく、上信電鉄は長野県進出を目指していたという話がありますが、あれは佐久平の各町村が、交通の要衝となることを狙ってそれぞれに誘致していたのだそうで、接続点がどこになるかは誘致合戦になったせいでいろいろな案があったのですね。羽黒下という話を見たことがありますが、こちらは秩父から十石峠を越えてくるという案だったそうで、実は武蔵野鉄道(現西武池袋線)の延伸案なのだそうです。

佐久鉄道時代が割と丁寧に描かれていますが、国鉄になってからもいろいろなエピソードが描かれており、小海線の通史としてよくできていると思います。鉄道ファンが求めるような車両の話はそこまで細かくないですが。そういう方面に興味があればお勧めできる本です。

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