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zoom RSS 交流電化と鉄道の発展

<<   作成日時 : 2015/10/21 13:00   >>

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東北福祉大学の鉄道交流ステーションが発行しているブックレットを入手して読んでいます。なぜ東北福祉大学がこういう事業を運営しているのかよくわからないですが、いろいろ手掛けているようで、ブックレットもなかなかのものでした。

ブックレットの1号は、「交流電化と鉄道の発展」として、仙山線で行われた交流電化の試験の話を、当時作並機関区で試験担当の技術助役を務めていた松野氏が行った講演会を基に収録したものとなっています。交流電化が始まり発展していく過程の、時代の雰囲気がよく伝わってきます。

機関車の試作に関して、随分三菱電機/三菱重工業(当時だと新三菱重工業?)が高く評価されています。商用周波数交流電化に際して、当時の技術で造れる交流用電気機関車として、日立製作所が担当した交流整流子電動機式(直接式)のED44と、三菱グループが担当した水銀整流器(イグナイトロン)式(間接式)のED45が製作されました。交流整流子電動機は、交流を直接直流電動機に流して回してしまうというもので、電圧制御で簡単に回せるため期待されていたようです。一方のイグナイトロンは、水銀蒸気の特性を使って交流を直流(厳密には脈流のようです)に変換する装置で、通常の直流電動機を駆動します。当初の予想では、イグナイトロンは振動にとても弱く温度にも敏感なので機関車には適さないだろうと見込まれ、直接制御が有利だろうと考えていたようです。しかし実際に試験をしてみると、イグナイトロンがまったく誤作動を起こさないのに対して、整流子電動機は故障が多発して使い物にならず、急勾配での起動試験でも、もともと整流子電動機は起動時のトルクがとても低いという弱点を抱えているために性能に大差が出たようです。このあたりのところは、交流電化に触れた本だと大抵書かれていることです。

これを実現するために三菱がどのような工夫をしたのかもいろいろ触れられており、完全な温度制御のために水冷式を採用し、そのために重くなった重量を補償するために動輪径を電気機関車の例にないほど小さくして、そのままでは弱くなって強度問題が出てしまう駆動用の歯車を、重工の戦車系の研究部署から持ってきた新材料で克服した、とあります。なかなかこれは面白い話ですね。イグナイトロンは水銀蒸気の密度管理が大事なのだそうで、そのために温度制御にこれほどシビアなようです。振動管理も大変で、完全な台車装荷の電動機を設計するなど大変だったようです。

その後、北陸本線や東北本線の電化に際してED70などを製作した際にも、会社の差異が出たとかで、松野氏は三菱を高く評価しています。作並の現地に技術者を1人常駐させて情報を集め、随時設計・製作現場に教訓をフィードバックしていたとか、イグナイトロンの製作部門と機関車の電機品の製作部門が同じ工場内だったので良かった、とか評価しています。それに対して日立も東芝も、エキサイトロン(日立)/イグナイトロン(東芝)の製作部署が機関車と別なので連携がうまくない、きちんと教訓を収集しない、などと批判していました。しかし、ここまで書かれると松野氏に何か背景があるのではないかと疑ってしまうほどですね。経歴の上では松野氏は東芝に天下っているのですけど…。

明らかな誤りもあって、たとえば商用周波数交流電化のドイツでの試験線のヘーレンタール線について、戦後フランス領になった、と書いていますが、実際にはフランスの占領地になっただけでドイツ領のままです。占領地に試験線があったのをいいことに、フランスは試験線の設備を一切合財持ち去ってしまい、自国で試験をして残りの技術を完成させたのです。また、ED45に初めて合成ゴム系の絶縁材を使った電線を使った、と書いていますが、実際にはEF58 61でクロロプレンゴムの絶縁材を使った電線の使用履歴があります。イグナイトロンのために徹底して振動対策をしたED45 1の乗り心地の良さに国鉄本社の技術者が感動して、151系「こだま」の誕生につながった、とあるのですが、それはちょっと牽強付会ではないですかね。昭和31年春には試験線の実験は一通り終わっていたとはいえ、昭和32年秋から設計している電車にそんなに早く反映されるものなのか。それより、終戦後間もなくのころからやっていた高速台車研究会の方が影響があるように思いますし、それが定説でしょう。

しかし交流電化が新幹線につながる重要な一里塚であったのは間違いないです。また、この段階では水銀整流器で実験しているのに、この後にはすぐシリコン整流器が登場してEF30につながり、早々に交流全出力で走れるEF80が出て、あっというまに新幹線へと飛躍していってしまう、この時代の進歩の速さには驚かされるばかりです。この他にも交流電化のブックレットを購入しているので、これから読むのが楽しみです。

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