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<<   作成日時 : 2016/03/11 13:00   >>

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ITMediaで北陸新幹線の関西延長ルートについての記事が出ています。最終的な結論には異論はないのですけど、最初の部分の説明に違和感がありますね。

高崎線が先に建設されて、そこから東北本線の分岐が検討された、というのは事実です。しかし、浦和、大宮、熊谷の3か所での分岐案が出た、とありますけど、最初の浦和の案はきちんとした文献で読んだことがありません。浦和案が出てくるのは、城下町である岩槻を通ろうとしたが、近視眼的な人たちの反対運動によって断念した、といういわゆる「鉄道忌避説」の文脈でだけです。鉄道忌避説は、青木栄一先生の著作でほぼ根拠が無いものだと立証されていますし、地域でたとえ反対運動があったとしても、明治政府は必要とあれば無視して当初の経路を押し通したであろう、という話も書かれていました。

大宮での分岐案は、リチャード・ボイルの中山道線実測の際にも当初から出ていた案です。なぜこの地点が選ばれたのかはよくわからないのですが、利根川への架橋との関係や、新たに敷設しなければならない線路の距離によるものなのでしょうね。あまりに根元に近い、川口あたりで分岐していれば、かなり長い距離を重複して敷設しなければなりませんし、鬼怒川が合流した後で江戸川が分流する前、となると架橋地点はほぼ今の位置に限定されます。高くつく架橋をできるだけ避けたい、というのが当時の発想ですし。

熊谷での分岐案は、この記事に描かれている図はちょっと西に寄せすぎて描いています。手元の資料だと、経由しようとしていたのは足利、佐野とあるので、実際には熊谷からほぼまっすぐ北上して太田から北東へ進み、両毛線のルートで東へ向かう計画ではなかったかと思います。伊勢崎や桐生までは経由する計画ではなかったのではないかと思います。両方の分岐案の比較検討の際に、熊谷分岐であれば新規に敷設しなければならない線路が短いということを特徴として挙げているので、この図のようなルートでは却って大宮分岐より長くなるのではないでしょうか。

大宮分岐案が選ばれたのは、東北方面への短い経路になることに加えて、やはり利根川架橋の問題があります。現行ルートであれば、栗橋の北で1か所だけ大きな架橋が必要になり、ここだけ渡船連絡をすれば暫定開業ができるのに対して、熊谷分岐案だと利根川の支流がわかれてしまうので、渡良瀬川や鬼怒川などにも大きな架橋が必要になり、暫定開業が難しい、という問題が挙げられていました。

なお、この記事にあるように、東海道ルートでは砲撃を受けて線路が遮断されてしまうから中山道ルートを、というのは、きちんとした文献に基づく研究ではやはり疑問視されているところです。陸軍が鉄道のルートに具体的な意見を述べるようになった最初の例は1886年のものだとされていて、この年に幹線の経路は中山道から東海道に変更になっているからです。このことは、やはり青木先生の記事などで説明されています。

まあ、幹線鉄道はなるべく寄り道をせずにまっすぐに、というのはそうなのですけど、前提となる説明がいろいろ変な記事です。

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コメント(2件)

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> 鬼怒川が合流した後で江戸川が分流する前、

明治の頃の流路は分かりませんが、少なくとも現代では鬼怒川の合流点(守谷)は江戸川の分流点(関宿)より下流です。なので江戸川に架橋しないようにすると鬼怒川は渡らなければなりません(実現した日本鉄道は鬼怒川を渡っています)。

> 熊谷分岐案だと利根川の支流がわかれてしまうので、渡良瀬川や鬼怒川などにも大きな架橋が必要になり、

熊谷分岐で余計に架橋が必要になるのは、鬼怒川ではなくて、渡良瀬川のさらに支流の思川かと思います。

東京から東北地方へ向かおうとすると、利根川(東遷事業の上流側)−江戸川と鬼怒川−利根川(下流側)の最低2ヶ所は架橋が必要、ということになりますかね。実際の日本鉄道は、利根川は渡船連絡で仮開業でしたし、鬼怒川の渡河でも大規模な路線付け替えをしているしで、当時の土木技術で大河を渡るのは大変だったのだなぁと思います。
旅の途中のとおりすがり
2016/03/19 23:45
ああ、そういえばそうですね。
鬼怒川ではなくて渡良瀬川ですね…。
しっかり確認していませんでした、ありがとうございます。
利根川架橋の経緯もいろいろ調べているのですが、まだわからないことも多くて…。
Tamon
2016/03/20 00:21

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