「白いかもめ」絶滅危惧種

記事のタイトルを見て何のことだと思ってしまいましたが、九州新幹線長崎ルートが建設されるとJRからの経営分離が予想される長崎本線肥前山口-諫早間に位置する佐賀県鹿島市が在来線の特急「白いかもめ」を絶滅危惧種と呼んで存続運動をしているということだそうです。列車名としてはあくまで「かもめ」ですが、885系を使っている列車についてはその車体の白さから「白いかもめ」と案内されることがあります。そもそも長崎ルートそのものの建設が鹿島市の反対などで決定できず延び延びになっているのに、熱心な運動ですな。
しかしJRが出している条件を見ると随分譲歩していますね。肥前山口-諫早を全部分離するのではなく、肥前山口から肥前鹿島まではJRで残して博多から直通の特急を(本数が5分の1に減るとはいえ)運行すると提示しているのは大譲歩だと思います。北陸新幹線関連で、本線のみならず関連する支線にも全部廃止を予告しているJR西日本では考えられないというべきでしょう。肥前鹿島-諫早は第3セクターで残すという提案だそうですが、これは肥薩おれんじ鉄道にもまして経営が厳しそうです。両端の鹿島と諫早以外市がないですし。平成の大合併で真ん中の太良町を除くと全部鹿島市と諫早市に含まれてしまっていますけど、大合併前の地図を見ると小長井町、高来町の2つの町がさらに長崎県側にあります。貨物列車の運行もないので肥薩おれんじ鉄道みたいな通過料収入を見込むこともできません。当然、交流電化設備は廃止でしょうね。3セクの経営安定を望むならむしろ、肥前山口-肥前鹿島間も3セクに持たせてJRから直通してくる特急の収入を当てにしたほうがよいように見えます。乗客にとっては運賃は高くなりますけど。
現状、博多-長崎間は振り子特急で2時間を切っているので、3時間40分を要していた博多-西鹿児島間に比べると新幹線が必要なのかと思ってしまうのも事実です。もちろん、九州新幹線は九州島内の時間短縮だけでなく、広島や関西方面への時間短縮、飛行機からの乗客奪還をも狙っているので、長崎ルートが不必要とはそういう面からはいえないのですけれど。ここまで譲歩してまでJR九州が新幹線を望んでいるというのは若干の驚きもあります。高速道路の発達した九州では高速バスとの激しいバトルもあるので、少しでも高速化をしたいのでしょうけど。これだけごねて譲歩を引き出せるのなら、鹿児島県民としては阿久根までJRが持つことを要求すればよかったのではないかと思えます。鹿児島県内の鹿児島本線沿線の市(平成大合併以前)は鹿児島市、串木野市、川内市、阿久根市、出水市の5つで、このうち鹿児島市、串木野市、川内市はJR在来線存続、出水市は新幹線の駅が設置されたのに対して、阿久根市は並行在来線分離+新幹線通過という踏んだり蹴ったりなことになっているからです。川内-阿久根間をJRに残せば、阿久根市民としても鹿児島市へ出るのに従来の運賃のままで済むわけですし。もっとも特急がなくなってしまったという問題は残りますけど。鹿児島県民としては何が何でも新幹線を建設して欲しかったので、あまり過剰な要求をJR側に突きつけることが憚られたという面があります。阿久根市も、事前にいろいろ文句は言っていたものの鹿児島県民全体として新幹線が欲しいという意思に固まっている中で正面から反対を唱えかねたというところがあるのです。
並行在来線の問題が持ち上がるたびに、3セクで残したり部分的に廃止したりと弥縫策に終始しています。しかし、根本的には営利企業・株式会社であるところのJRに、公共性の名の下に到底儲からないローカル線の維持を押し付けているところに問題の根幹があるわけです。JR西日本が、ローカル線では月に一度代行バスなしの昼間全面運休をして保守作業をしたり、保線の軽減のために25km/hの速度制限を設定したりと過剰な合理化をしていると何かと批判の対象にもなりますけど、株主総会で外国人株主からアーバンネットワークと新幹線以外を全部廃止すべしと要求を受けた経緯があるそうで、株主から見れば当然の要求です。もともと政治家の過剰な圧力で、儲からないローカル線の建設をやらされたり運賃の値上げを抑えられたり要員の採用計画をいじられたりといった経営面での悪影響を受けてきた国鉄時代の反省から、政治の圧力から極力フリーになることを目指して純民間企業として発足することを選択したという経緯もあるのですけど、やはりかなりに無理があったのではないかと感じます。欧州の鉄道を見ると上下分離が一般的ですから、やはり何らかの公的関与を残す方策が必要だったのではないかと感じます。電話でユニバーサルサービスを維持するために全ての電話事業者が加入者からユニバーサルサービス料金を徴収して費用に充てている制度があるわけですから、同様に全ての交通機関からユニバーサルサービス料を徴収しておいて、どうしても残さなければならない公共交通に使える仕組みを必要としているように思います。もちろんそうなれば、政治家の圧力で変な目的に転用されてしまわないようなクリアな制度運営が必要ですし、再び特定地方交通線のような枠組みであまりに輸送量が減少している路線についてはバス転換などの策を取る必要もあるでしょう。
それ以外の選択肢としては、廃止の危機に瀕している路線の地元自治体などが共同戦線でJRの株式を買い集めて経営に路線存続の圧力をかけることでしょうか。しかし上場済みのJR3社の時価総額を合計すると7兆7000億円もあるので、ローカル線の地元自治体のようなもともとお金のないところがいくら寄り集まっても経営に圧力を掛けられるほどの株式を買い集めるのは難しそうに思えます。また、結局政治の圧力で不必要な路線の営業を余儀なくされた国鉄時代とどこが違うんだという点もあります。やはりユニバーサルサービス制度に一票入れたいところです。




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