東海道新幹線 安全への道程

齋藤雅男氏の著作、『東海道新幹線 安全への道程』を読みました。

東海道新幹線、とタイトルに入っているものの、齋藤氏の国鉄入社から退職に至るまでの仕事の経歴を詳しくまとめた本になっており、その後半において東海道新幹線への取り組みが出てきます。戦争中は海軍の技術士官をしていたそうで、戦後間もなく運輸省鉄道総局に入り、国鉄での仕事を始めたそうです。最初の頃は戦災国電の状態調査と復旧といったあたりから始めたそうで、また大館機関区長だった頃の蒸気機関車のエピソードなども面白いです。高砂工場での貨車製造に当たってのタクト生産システムの導入なんていう知らなかった話もあり、九州の交流電化の推進も、齋藤氏がかなり力を発揮したようです。

やはり後半の東海道新幹線への取り組みは、まさにこの本の最大のテーマと言えると思います。齋藤氏は建設そのものには携わっていなかったようですが、運行開始後まもなく東海道新幹線支社の運転車両部長として着任して、初期不良の続発していた東海道新幹線を安定化させる役割を果たします。私も、新幹線の初期の頃は大変だったという知識はありましたが、この本を読むと本当に事件事故の続発で、関係者は日夜奔走していたことがよくわかります。これをいちいち原因究明し、根本対策を打ち、規程やマニュアル類を整備していく、膨大な作業をしていたことが、この本でよく伝わってきます。新幹線が結果的に旅客に死者を出す事故を初期に出さずに済んだのは、これを読む限りではかなり僥倖であったように思われます。従来の蒸気鉄道から、近代的な装置集約産業としての高速鉄道へと発展させる上で、齋藤氏の果たした役割の大きさを納得することができます。新幹線が安定してくると、毎年うなぎ上りに増えていく旅客に対応するために奮闘するところも描かれ、ゴールデンウィークの最終日に1日50万人を運んだ話などは、まさに「大輸送」です。

新幹線の輸送システムの形成を第一線で指揮してきた本人が、ここまで詳しく回想してくれたのは非常にありがたいことです。後世の人間にとって貴重な資料になります。また文章もわかりやすく面白く書かれているので、どんどん読み進められます。齋藤氏は1919年1月生まれということで、2014年のこの本の刊行時点では御年95歳のはずなのですが、実に元気なものだと思わされます。今でも鉄道ジャーナルの連載をしていますけど、これからも多くの経験と知識を我々の世代に伝えてもらいたいところです。

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