フォルクスワーゲン排気ガス対策問題

この連休中に発覚した、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン排気の詐欺問題が騒がれていますね。

何でも、台上試験が行われていることを検知して、エンジン排気をその時だけ綺麗にするモードで運転して、排気ガス規制のための検査をごまかしてしまうソフトウェアが組み込まれていたそうです。エンジンは、燃費と排気ガスのクリーンさと走行時の特性を高い次元で両立しなければなりませんが、排気ガスのクリーンさだけを優先すれば、燃費や特性を犠牲にすることで割と簡単に排気ガス規制の基準をクリアすることができる、というわけです。しかしそのままでは一般販売の際に重要な燃費や性能に影響してしまうので、排気ガス規制の検査の段階でのみ、そういう排気ガスのクリーンさを優先させるモードに切り替えていたわけです。アイデアとしてはわかりますが、実際にこれをやってしまうというのは、技術者としてはありえない話だと思います。

台上試験が行われていることの判定は、何でも駆動輪のみ回転して加速度が出ていないこと、ハンドルが回っていないこと、などを見ていたそうです。台上試験なので、タイヤを測定輪の上に乗せて回転させますから、実際には車は走らないので加速度は計測されないですし、ハンドルも回らないですから、そういう台上試験特有の条件を見ていたわけですね。今の車は電子システムだらけなので、こういう条件を判定させて切り替えることは、ソフトウェアの設計だけで簡単にできたのでしょう。

こちらの英語の記事によれば、現行の排気ガス規制の検査体制では、実走行時の排気特性を正確に測定できていないのではないか、と考えた環境保護団体が、実走行させながら排気ガスを測定する実験をやってみたことが、発覚のきっかけだったようです。その際に異様に高いNOxの排出を計測したために、なぜこんな値が出るのかをフォルクスワーゲンに説明を求め、1度はソフトウェアの問題だとしてリコールを実施したのだそうですが、当然ながら根本的な技術は何も改善されていないので、リコール後の車両でも実走行試験では環境基準を全然クリアできないわけです。そしてついに、当局がこのままこの試験結果を説明できない状況であれば、2016年発売モデルの認可はできない、と通告したために、フォルクスワーゲン側が不正であることを認めた、という流れのようです。

フォルクスワーゲンとしては、不正はほんの一握りの社員によって行われた、と説明しているようですが、これはありえない話です。エンジンの開発は、どう考えても数百人単位のチームを組んでやらなければならない仕事であり、実際に開発に当たっている人たちが、自分の開発しているものが環境基準をクリアできているかどうかをわかっていないはずはないからです。相当上層部まで把握してやっていたと見ざるを得ないでしょう。

あちこちの意見を聞くと、アメリカのディーゼル排気ガス規制は世界一厳しいらしく、フォルクスワーゲンはこれをクリアできていることを宣伝していたようです。SKYACTIV-Dで有名になったマツダですら、アメリカの基準はまだクリアできていないのだそうで、もしフォルクスワーゲンがクリアできていなかったのなら、一般量産車の価格でクリアできる技術は世界にまだない、ということになりそうです。

なお、先ほどの記事にもありますが、BMW X5は実走行試験でもクリアした、とあります。しかし、日本での販売価格が700万円からという高級車であり、それなりに高価な技術を投入して排気ガス対策を図っているものと思います。金さえかけて良いのであれば、クリアする技術はあるのです。しかも、尿素水溶液を使って排気ガスを処理する尿素SCRを採用しているらしく、尿素水溶液の定期的な補充が必要なようです。もっとも、BMWの正規の定期点検を受けていればその際に補充するので、ユーザーでの補充は不要、という主張のようです。トラックでは尿素SCRはもっと普及しているのですけど、普通乗用車で採用しているところもあるのですね。このように、費用と手間をかけることを厭わないのであれば、今の技術でもクリアは可能のようです。

しかしこの大問題、フォルクスワーゲンの経営を揺るがしそうですし、今後の自動車業界の方向性にも影響を与えそうですね。

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