人はどのように鉄を作ってきたか

人はどのように鉄を作ってきたか』を読み終わりました。久々に鉄道以外の本ですね。と言っても鉄ですが。

著者の永田氏は大学の教官で、金属工学、冶金が専門のようです。製鉄の歴史をかなり研究してきたようですね。大きく言えば、ヨーロッパの伝統的製鉄法、日本の伝統的製鉄法(たたら製鉄)、そして近現代の製鉄法の3種類を紹介していますが、ヒッタイトに始まる鉄の歴史も多少触れています。

木炭で鉄鉱石を熱することが非常に重要だったのですね。炭素成分が鉄に浸透すると融点が下がるのだそうで、鉄そのものの融点まで熱して溶かしているわけではないのだそうです。現代の製鉄ではそれをコークスでやっているわけですが。著者は、これを熱する用途(必ずしも炭素でなくてよい)と、鉄の炭素成分量の調整(炭素が必要)に分離してはどうかと、電子レンジで加熱しながら炭素量の調整だけ別途炭素を添加して製鉄するという方法を考えたそうで、実際にできるのだそうです。これは面白いですね。電力コストなどから概算しても、今の製鉄法と太刀打ちできるコストを実現できる可能性があるそうで、超大規模な高炉を使うしかなかった現代の製鉄が、あっさり小さな規模でもできてしまうのではないか、そして二酸化炭素排出量を削減できるのではないかと、いろいろ夢が広がる話です。

ただ、製鉄の専門用語が説明なしにポンポン出てきて読みづらいところがあります。それくらい自分で調べながら読め、と言うかもしれませんが、これは気軽に読むことを前提とした新書なのですが。また歴史を解説するなら前の時代から順に書いてほしいのですけど、必ずしもそうなっておらず話があちこち飛んでいますし、現代において昔の製鉄法を再現した話がドキュメンタリータッチで描かれている部分がありますし、結構微妙です。どういう成分がどれくらい入れば鉄がどういう性質を持つか、という話はまとまりなくあちこちに分散して書かれているようですし、なかなか読みづらいです。

とはいえ、著者の熱意はよく伝わってくる本で、製鉄に興味のある方にはお勧めできます。

この記事へのコメント

たづ
2019年09月29日 23:12
何年前だったか忘れましたが、「今ある電気炉より数段強烈なアークでプラズマ状態にしてCO2やエネルギー消費量を減らした製鋼法を研究」とかいう記事を新聞で見たことがあります。
多分まだ商業ベースには乗らないのでそんな製鉄所があるなんて話は聞いたことがありません。
「電子レンジ」は想像の斜め上でした。今となっては電気コンロやIHより同量の目的物の加熱にかかる消費電力が少ないですから言われてみれば納得ですが。
Tamon
2019年09月30日 00:09
実際にたたら製鉄と同じ原理のものを自分で炉を造って試すような先生なので、いろいろやってみるんでしょうね。電子レンジでできた鉄の写真とか載っていて面白いです。