こんなものまで運んだ! 日本の鉄道

こんなものまで運んだ! 日本の鉄道』を読み終わりました。交通新聞社新書は当たり外れがありますが、これは当たりでした。

タイトルの通り、日本の鉄道でいろいろなものを運んできたことについて、事例を挙げながら解説しています。主に貨物・荷物・郵便輸送について触れていますが、旅客でも宗教臨の話が書いてあります。生きた動物、人間の遺体、現金、新聞、美術品など、普段はあまりどうやって運んでいるのか取り上げられないようなものを、かつての鉄道ではどう扱っていたのか解説しています。制度や歴史の側面にも触れていて、単なるエピソード集ではないところも優れています。

ヤード集結式の貨物輸送についてはまだどういうシステムであったのかわかるのですけど、これまでは荷物輸送や郵便輸送がどのように行われていたのかはよくわかっていませんでした。この本が嬉しいところは、そういうシステムについて解説が行われているところです。荷物輸送や郵便輸送のシステムはこうなっていたのですね。

また新聞輸送についても、著者が新聞社に勤めていたということで、内部事情も交えながら詳しく解説していました。新聞を荷物車で運んでいたことは知っていましたが、夜行列車の荷物車で運んでも、遠隔地では朝刊の配送に間に合わないだろう、運ぶのは業界紙などに限られるのでは、と思っていたのですが、紙面を電送して現地で印刷するシステムが整う1980年代後半くらいまでは、本当に夜行列車の荷物車で全国紙の朝刊夕刊を運んでいたそうです。3時から5時くらいには販売店に到着しなければならないため、夜行列車の終着駅まで運ぶのではなく、途中駅で降ろすことが多かったそうです。東京から東北方面だと、19時台に上野を出発する「八甲田」がトップバッターで、これに間に合うように、もっとも遠隔地へ運ぶ版は18時頃締め切りだったのだとか。面によっても締め切り時刻が異なっていたのだそうです。これでも、弘前だと継送される関係で、全国紙は通常の朝の配達はできなかったのだそうですが。

この本はいろいろなシステムをうまく解説しており、どんなものかを概観することができます。また大変読みやすく面白い本です。一方で新書の枠ですので、すべてを列挙するということは期待できません。例えば新聞輸送では、著者が東京の新聞社に勤務していたからなのでしょうが、東京で印刷して東北信越方面へ配送するものについて説明されており、九州寝台特急は何をどこまで運んでいたのかはわかりません。おそらく西日本へは、大阪や福岡で印刷したものを配送していたはずなので、東京から西の遠隔地へは運ばなかったのではないかと思います。そういう意味で、新聞輸送のすべてをくまなく解説するということはできていません。これはそのほかの輸送についても同様です。しかしこれはやむを得ないというべきところで、可能ならばそういう方面の完全な研究書があれば、と思ってしまうところがあります。大変良い本でした。

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